つくはねのみねよりおつるみなのかわ / 陽成院

2字決まり
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百人一首

【原 文】筑波嶺の峰より落つるみなの川つくはねのみねよりおつるみなのかわ  恋ぞ積もりて淵となりぬるこひそつもりてふちとなりぬる

【上の句】筑波嶺の峰より落つるみなの川(つくはねのみねよりおつるみなのかわ)

【下の句】恋ぞ積もりて淵となりぬる(こひそつもりてふちとなりぬる)

【決まり字】2字決まり「つく」

超現代語訳

男女川(みなのがわ)の水かさが増えるように、ボクの綏子内親王(すいしないしんのう)への想いも増えちゃった!

歌のポイント

  • もっともピュアな恋心を詠んだラブレター
  • ハッピーエンドの映画になりそうな恋の歌
  • 藤原氏の圧力から暴君と呼ばれた天皇の歌

歌の情景

この歌は、想いを寄せる女性に自分の気持ちを素直に伝えたラブレターです。
恋の歌が多い百人一首ですが、その中でも断トツにピュアな恋心を歌った美しい一首です。
愛しくてたまらない綏子内親王への想いを、筑波山の峰から流れ落ちる男女川に例えています。、最初はわずかな水だけど、やがて時間の経過とともに深い淵となるように、気が付いたら私の想いも深い淵のようになってしまったと歌い上げています。

語意

【つくばね】常陸(ひたち)の国・現在の茨城県に筑波山の頂上 男体山・女体山の二つの峰がある。古来より歌枕(歌によまれる名所)としてメジャースポット
【峰より落つる】山頂から水が落ちていく
【みなの川】筑波山を水源として霞ヶ浦に入る川。男体山・女体山から流れ出る川なので男女川(みなのがわ)、水無乃川とも書かれる
【恋ぞつもりて】川が次第に大きくなるように恋心がつのって
【淵となりぬる】淵は川の水が深くなっている所で、恋心が深くなったの意味

歌の分類

【歌集】後撰和歌集
【歌仙】-
【テーマ】恋の歌
【50音】つ音

歌を詠んだ人物

【作者】陽成院(ようぜいいん)
【性別】男性歌人
【職業】天皇(現代職業:天皇)
【生年】869年1月2日(貞観10年12月16日)
【享年】949年10月23日(天暦3年9月29日)

陽成院は、第57代陽成天皇です。父・第56代清和天皇(せいわてんのう)と母・藤原高子(ふじわらのこうし)の第一皇子として生まれました。20番目の歌人・元良親王の父でもあります。母方のオジ藤原氏の圧力があり、なんと生後3カ月で皇太子となり、わずか9歳で天皇に即位します。

15歳を迎えた883年(元慶7年11月)そしてなんとも不可解な宮中殺人事件が起きてしまいます。育ての母を同じくする乳兄弟である源益(みなもとのまさる)が、宮中で何者かに殺されてしまったのです。陽成天皇は、なんとこの事件の犯人とされてしまったのです。天皇として即位していた少年時代の8年間は、奇妙が行動が多いなどたくさんの悪い噂を立てられ、しまいには殺人犯扱いされるというなんとも不遇な時代を過ごします。

そして17歳で15番の歌人・光孝天皇に天皇のポジションを明け渡し、その後65年間上皇としての人生を過ごしました。この「つくばねの~」のピュアな歌のイメージとはかけ離れていますが、全ては藤原氏の力が関係していたように思います。